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2014年7月10日 (木)

マハーバーラタ、アヴィニョンより。

ボンジュール。
現地では挨拶をフランス語、会話を片言英語、仲間内では日本語と同時に3ヵ国語を駆使する毎日で、「自分スゲェ。」と勘違いしてる、央です。

マハーバーラタ@ブルボン石切場、この時期に珍しい嵐という悪天候により初日が中止になるという、最早伝説のネタになりそうな感じですが、二日目にして実質初日を迎えました。
おかげさまでほぼ満席の、トリプルコール&スタンディング・オベーション。
また、フランスの主要紙、ル・モンド紙他から大絶賛されました、ありがたい。
フランス語堪能なバンドミストレス・寺内亜矢子さんの話では、記事の見出しがマハの最後のセリフ、「神も獣も王たちも、民草とその子供らも、あまねく平和の訪れに心によろこびあらしめよ」のフランス語字幕をそのまま使って、「アヴィニヨン、よろこびあれ、平和はついに来たれり!」、なんだとか!
今のこちらの状況を思うと、ちょっと感慨深いものがあります。
また食堂のまかないチームが、「何年もブルボンで仕事してるけど、上演中に観客がひとりも帰らなかったのなんてはじめてよ!すごい!」と言ってたのだとか。泣ける。

まずは最高のスタート切れました。しかしまだ先は長く9ステあります。
怪我しないよう、もう病気しないよう(GP直後嵐の天気となり、一時間以上外で待たされた結果高熱を出しました。関係者の皆様、改めて本当に申し訳ありませんでした)、一つ一つ丁寧にやっていきたいと思います。

でもね、アウトプットも大事だけどインプットも大事。
昨日は、僕たちと同じ招聘されたINの作品を2本(うち1本はメイン会場・教皇庁にて)鑑賞。
またアヴィニョン演劇祭では街中の小劇場でOFFの作品をやってるので、たくさん見てこようと思います!


ル・モンド紙の記事↓

以下、SPAC他劇評をいつも書いてくださる片山幹生様が訳してくださった文です。


--『ル・モンド』2014年7月9日10h45 ブリジット・サリーノ

ついに、夕べの約束の場所に美しいスペクタクルが到来した。7月8日(火)、ブルボン石切場で、『マハーバーラタ─ナラ王の物語』の幕がついに上がったのだ。前日、7月7日(月)に予定されていた初日公演は雷雨のため、中止しなくてはならなかった。アヴィニョン教皇庁の塔の一つを損傷させてしまうほどの激しい雷雨のため、アヴィニョン市街から12キロほど離れた場所にあるブルボン石切場へ向かう道が通行不能になってしまったのだ。

ブルボン石切場は楕円状の壮大な空間で、石灰質の荒れた壁面が空に向かい開いている。1985年にピーター・ブルックが上演の場として選ばなければ、この場所がスペクタクルの会場になることは消してなかっただろう。ブルックがそのとき、上演したのはまさに『マハーバーラタ』だった。上演時間は12時間、決して忘れることの出来ない夜通しの公演だった。今年上演される『マハーバーラタ』の上演時間は、幸いなことに、およそ2時間。日本人演出家、宮城聰の公演である。苛酷な運命の物語、アヴィニョンは五十五歳のこの演出家を見出した。

この演出家のアイディアはきわめて独創的だ。ピーター・ブルックがこのインドの聖なる書物の筋立に沿って、パンダヴァ家とカウラヴァ家の王族の戦争の経過を辿っていったのに対し、宮城聰は『マハーバーラタ』のなかで、人々が戦わない一エピソードだけを取り上げる。それは比類のない魅力を持つ姫、ダマヤンティの物語だ。
天国の神々も彼女との結婚を望んだほど魅力的な姫だったが、彼女が伴侶として選んだのは人間の男、ナラ王だった。結婚して12年が過ぎた。二人は幸せで王国も繁栄した。ある日、隣国からナラ王の弟がやってくる。弟は兄をサイコロの賭けの悪徳にひきこんだ。ナラ王はすべてを失ってしまった。自分が愛する姫までも。ナラ王は道ばたに投げ出された自分の惨めな運命に妻を巻きこむことを望まなかった。このように「ナラ王の物語」は展開する。いくつもの試練の果て、二人は再会する。

宮城は歌舞伎、能、文楽の伝統を取り入れて、この物語を表現した。彼の技法には、西欧の発想には見られないいくつもの精緻な工夫を見出すことができる。しかしこうしたことは重要ではない。観客がブルボン石切場で目にしたことにこそ重要さがある。この石切場の会場で観客は、円形の舞台に取り囲まれる。上方で観客をとり囲む円形の帯が、20人の俳優と10人の演奏者の活動の場となっている。ガムラン、ジャンベなどのパーカッションが演奏されるなか、俳優たちは分業体制で自分の役割を果たす。すなわち、語りを担当する俳優と演技を担当する俳優に分かれているのだ。シンプルであると同時に極めて精緻な方法である。そしてなによりも非常に美しい。圧迫感のある美しさではなくて、重みから解き放ってくれるような美しさである。あらゆるものが、はかなく、軽やかな存在であるような世界に宛てられた郵便物が思い浮かぶ。

紙で作られているものもあるという衣装の素晴らしさも驚くべきものだ。そして俳優たちの素晴らしさ!彼らはしっかりと組まれた指のように緊密なアンサンブルと卓越した技能を持っている。そしてユーモラスなのだ。中でも印象的だったのは、語り手の阿部一徳である。彼は時々フランス語を話したりする(《アヴィニョン橋の上で》を歌ったりもした!)。そしてダマヤンティ姫を演じた美加理。どこをとっても、目がくらむほど輝きを放っていた。最後の場面で彼女はむき出しになった腕を空に伸ばす。完璧な動きだ。マハーバーラタの神々が演劇の神々と重なり合ったと思うほどだった。

要するに、私たちはこの作品で幸福感を味わうことができる。そして「ナラ王の物語」の最後の台詞を信じることできるだろう。
「悦びは、われらとともに!ほら、ここに平和を見出せり!」。


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